大判例

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東京地方裁判所 昭和43年(ワ)12022号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕本件土地が原告の所有であること、昭和三二年一〇月一八日に原告と被告会社との間に原告主張のとおり本件土地の賃貸借契約が結ばれたこと、被告会社が原告主張の(二)および(三)の建物を所有し、これらの建物と原告主張の(四)および(五)の建物とを使用して本件土地を占有していること、被告坂本が右賃貸借契約成立の以前から右(四)および(五)の建物を所有し、(四)の建物については昭和三二年九月二四日にその所有権取得登記を了し、本件土地を占有していること、原告主張の契約解除の意思表示が昭和四三年六月二〇日に被告会社に到達したことは、いずれも当事者間に争いがない。

そして……を綜合すると、本件土地の従前から現在にいたるまでの使用状況、被告会社と被告坂本との関係につき被告ら主張のとおりの事実をすべて認めることができる。また前掲各証拠によれば、本件賃貸借契約締結についての交渉および契約書の作成にいたるまで被告会社を代表ないし代理して原告と折衝したのは、被告会社の当時の代表取締役蛭子卯三郎、監査役林高保らであつて、被告坂本は一度も原告と面接したこともなく、原告は昭和四〇年頃まで同被告の名前さえ知らないでいたこと、右の原告との折衝の前後を通じて被告会社の代理人らは原告に対し、被告会社と被告坂本との関係や被告坂本が本件土地の上の建物の一部を所有している事情等について一言も原告に説明したこともなかつたので、原告はこれらの事情を全く知らないまま賃貸借契約締結後一〇年余を経過したこと、たまたま昭和四三年五月頃にいたり、被告会社が借地上の建物を堅固な建物に改築するための借地条件変更の申立を裁判所に提出したので、原告は本件土地上の建物の状況を調査したところ、地上の建物の一部が被告坂本の所有となつている予定をはじめて知るにいたり、直ちに被告会社に対し前示の契約解除の意思表示をしたものであることを認めることができる。以上の認定の妨げになる証拠はない。

右の事実から考えると、本件賃貸借契約の締結に際し、被告会社が原告に対し、既にその以前から本件(四)および(五)の建物が被告坂本の所有に属し、(四)の建物についてはその旨の登記すらなされていた事実を一言も告げず、被告会社のみが本件土地を賃借するものであると称して契約を結んだことは、たとえ被告会社と被告坂本とが前認定のように密接な関係がある事情を考慮に入れてたとしても、そのような両者の関係を全く知らず、被告坂本の名前すら知らなかつた原告に対しては、重大な背信行為となるとの非難を免れないものというべきである。その背信性は、契約締結の当初から被告会社以外のものが被告会社の賃借地上に建物を所有していたのに、これを原告に全く告げなかつたという点において殊に非難に値するものというべく、契約締結の後に被告会社がその所有建物を他に譲渡した場合のように、譲渡人と譲受人との関係如何によつてはその背信性を否定しうる場合もあるのと同一に考えることはできないものといわざるをえない。右のように、背信性を否定しうる場合には、賃貸人は民法六一二条によつて契約を解除することはできないと解するのが相当であるけれども、その半面、本件のように無断転貸譲渡と同様の背信性が契約の当初から存在する場合には、賃貸人はこれを理由として契約を解除することができると解するのが相当である。(秦不二雄)

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